例年6月29日の岡山空襲の時期に行われる、ER平和学習プログラムが、今年度も新型コロナウイルス感染予防対策の中で、工夫して実施されました。
6月23日㈬、30日㈬に実施されました。23日は2年生、1年生合同での開催となり、2年生の半分は、講演会を聴くグループで、体育館へ、半分は戦跡フィールドワークで、班毎に活動しました。
1年生は自教室にて、体育館とZoomで繋がり、講演を聴き、質疑応答の時間も共有出来る形態となりました。
* 体育館の様子をZoomで共有 *1年生は自教室にて講演を聞く
平和講演会は、2年生のER平和実行委員会が司会進行をし、講師は、「岡山の戦争と戦災を記録する会」の成田 昌士さん(学区にお住まいの岡山空襲の経験者の方)、この会を運営されている、谷口 朋美さんでした。
◆成田さんの話
*左)谷口 朋美さん、右)成田 昌士さん:「岡山の戦争と戦災を記録する会」
講師の成田さんは、小学2年の1学期、8歳の時に岡山空襲を経験されました。その時の様子が、とても鮮明に、分かりやすい言葉で話されます。
「『ドーン』という物凄い音がして、姉、妹と母と、自宅近くの東湖園の池に逃げた。隣の山陽学園(戦時中、紡績会社)の上に、焼夷弾を落としている。物凄い炎が上がり、逃げてきた池の淵に焼夷弾が落ちてきた。お腹の辺りまで池に浸かっていた自分※を、凄い勢いで母は持ち上げ、「まさし、逃げい!」と。」
家が焼失した為、近所の方が、東岡山にある納屋を貸してくださることになり、そこに向かっている最中の出来事です。
逃げている途中、空襲警報のサイレンが鳴り、一機の戦闘機が頭上にあり、母は、姉と自分を抱えて1メートル50センチ位の田んぼに飛び込んだ。
助かった、と分かった時の、母の「良かったなぁ」という表情が今も忘れられない、と。」
※戦時中、防空壕に入るか、水に浸かるか、穴がある所に入るよう訓練していた。しかし、岡山空襲は爆弾ではなく、焼夷弾の為、窒息死、焼け死ぬ人が大勢いた。
※焼夷弾…通常の銃砲弾・爆弾とは異なり、目標を爆発で破壊するのではなく、中に入っている燃料が燃焼することで、対象物を火災に追い込む
この時代の女性は、「皆、頑張ろう!」と明るいかけ声をかけてくれ、泣き言一つ言わない立派な女性だったそうです。
戦後の発展は、女性により支えられている、といっても過言ではない、と話されました。
最期に、成田さんが話されたかったのは、「なぜ戦争はいけないのか」ということ。
それは、「今、またこれからを担う若い世代の人が皆死んでいく」ということだから。
「どんな事があっても、戦争はいけん」と熱く話されていました。
30日(水)に2年生の半分の生徒、また1年生は28日(月)から30日(水)に実施する戦跡フィールドワークに繋がる、講演会となりました。
生徒の皆さんは、講師の方のお話を真剣に、そして時にメモを取りながら、
しっかりと聞いていました。
2年生(体育館) 1年生(教室)
◆谷口さんのお話
「岡山の戦争と戦災を記録する会」の事務局 谷口 朋美さんの講演がありました。
この会が「どういう活動をしてきたか」、「みなさんに伝えたいこと」の2点を分かりやすい言葉で話されました。
・活動の内容
会の歩みは、1994年3月、岡山空襲から戦後50年の節目に、岡山市役所からスタートしました。そして1998年、広く市民の参加を促す為、現在の会の名称となりました。現在改訂版9冊目になっている、「今に残る街角の証言者」という本が出版されています。
岡山に70から80くらい、戦災遺跡があり、岡山市街を幾つかコースに分けて、『戦跡巡り』を毎年実施されています。(昨年度、今年度を除く)
谷口さんは、岡山空襲から76年、若い世代へ空襲のことを知ってもらうよう、毎年「ピースキャンドル」という活動もされています。(昨年度、本年度は、SNSを使って実施)
・みなさんに伝えたいこと
「岡山空襲は昔あったことだけで終わるのではなく、世界で現在も内戦や空爆などが起こっているため、決して終わったとは言えない。過去、何があったのかを知り、なぜそのような事が起こったのかを考え、これからの未来を、どう平和に築いていくかを若い人がこれからを考えていってほしい。」という言葉で締めくくられました。
◆質疑応答
生徒(2年生) 「今の自分達に出来ることは、何ですか?」
谷口さん 「体験者の方の本を読んだり、映画(内容が偏っているものもある)を
観たり、関連する絵本を見ること。また戦跡を巡り、見るだけでなく、
みんなで考えて、話し合ってほしい。まわりの人に伝えてほしい。先ず
は、一番に家族や友達に、今日あったことを話し、伝えることです。今
の生活が、全てなくなってしまうこと、つまり、今、没頭している事が 出来なくなるということを、どう思うか?どうしたいか? 今の生活を続
けていくには、どうしていったらよいか、を是非考えてほしい。」
と力強く話されました。
質疑応答は、中学2年生、1年生という若い視点で、今後の持続可能な社会を構築するには、まさにSDGsに繋げるためには、自分達はどうしていったらよいか、のヒントを模索するものとなりました。この生徒は、「次世代へ伝えられるよう、頑張っていきたい。」と力強く、頼もしい言葉で締めくくってくれました。
◆講演後、お礼の手紙を書く教室の風景(2年生)
空襲を実際に経験された方のお話を直接お聴きできるのも、時間の問題となっています。このような語り部の方と体育館で直接、またで身近Zoomお話をお聴きし、質疑応答を出来る機会を作って頂き、本当に有り難いことだと、あらためて痛感した一日でした。
これを機会に、周りの人と少し話してみませんか?家族で戦跡巡りをしてみませんか?考えてみるきっかけとなれば幸いです。
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